マルチビタミンミネラルサプリメントと胎児の成長との関係
マルチビタミンミネラルのサプリメントを服用していた女性は、葉酸のみを服用していた女性に比べて妊娠初期の胚発育が良く、低出生体重児のリスクが低いことが示され、受精の前後は葉酸だけでなく、マルチビタミンミネラルを補充することの意義が示されました。
図:受精前後に必要とされるビタミンやミネラル(Hum Reprod 18 July 2024 deae168, Figure 1を改変)
妊娠を希望する女性にとって、妊娠前からの葉酸サプリメント補充は胚や胎児の成育をうながし、神経管閉鎖障害や低出生体重児、SGA児(在胎不当過小児。在胎期間相当の体格よりかなり小さく生まれた新生児)のリスクを低減することがわかっています。
この研究は、葉酸のみの補充でよいか、マルチビタミンミネラルの方がよいのかを、胚の発育や胎児の成長、出生体重を比較することにより研究したものです。
2010年1月から2020年12月にかけて、オランダのロッテルダムにあるエラスムス大学医療センターの研究プロジェクトに登録していた、妊娠10週未満の妊婦(単胎妊娠)1,076名を対象に行われた研究です。
研究では、妊娠4週間前から妊娠8週までのサプリメント(葉酸、もしくはマルチビタミンミネラル)の摂取についてのアンケートを実施、妊娠中の胎児の頭殿長(頭からお尻までの長さ)、体積、発達段階、また出生児の体重を記録し、葉酸のみの服用とマルチビタミンミネラルの服用とでそれぞれを比較ました。
出生児の体重が全体の中で小さい方から10%の胎児をSGAとしました。またSGAの中でもさらに小さく生まれた全体の3%となるSGA児についても分けて分析を行いました。
結果として、受精前後にマルチビタミンミネラルを服用していた女性は、葉酸のみを服用していた女性に比べて妊娠初期の胎児の頭殿長や体積が大きくなることが分かったということです。また、SGA(全体の3%)のリスクは45%減少しました。
胎児の発達や流産の発生については、葉酸単体とマルチビタミンミネラルの服用とで差は見られなかったとのことです。
妊娠前から妊娠期にかけてのマルチビタミンミネラルサプリメント補充の重要性と、それが胎児の成長に及ぼす影響を示す結果となりました。
<コメント>
マルチビタミンミネラルに関する研究は今までも行われてきましたが、そのほとんどは非欧米諸国や低・中所得国で実施されてきたもので、高所得の欧米人を対象にしたものは、今回がはじめてとなります。
妊娠前からの葉酸の摂取については、その必要性が広く知られているところではありましたが、今回の研究により、マルチビタミンミネラルの服用がより有用である可能性が示されています。
受精後は、葉酸の代謝に関連する栄養素だけでなく、ビタミンD、ビタミンE、亜鉛、セレン等の栄養素がより必要となります。
そのため、ふだんの食事から十分の栄養素が摂取できていない場合は、葉酸だけでなく、ビタミンやミネラルを満遍なく補充することが子供の成長にとって重要という仮説を支持する結果となりました。
ただし、この研究で実施されたアンケートでは、マルチビタミンミネラル服用の有無を回答しているだけで、その配合については不明のため、さらなる検討が必要とのことです。