食生活 (栄養)

肥満女性の減量が治療成績に与える影響

細川忠宏

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肥満の女性が体外受精治療を受ける前に、3〜6ヶ月で5%以上の減量を行うと、その後の治療で投与するホルモンの量が少なくて済み、10%以上の減量を行うと、治療成績が改善する可能性が示されました。

肥満は生活習慣病だけでなく、不妊症のリスクも増加させることが知られていますが、不妊治療における適切な減量の効果については、まだ明確な指針がありません。

そこで、中国の研究者らは、不妊症の肥満女性が体外受精治療を受ける前に減量することが、治療成績にどのような影響を与えるかを調査しました。

2017年から2022年にかけて、中国の浙江省にある嘉興母子保健病院で、初めて体外受精治療を受ける18~38歳の女性のうち、BMIが30以上の肥満女性を対象に研究が行われました。
卵巣の機能が低下している女性や、卵子提供を受けている女性は研究から除外されました。

参加者は以下の全4群に分けられ、治療前の3〜6ヶ月間、体重管理プログラムに参加しました。

【5%減量目標グループ】
・減量A群(5%以上の減量)ー98人
・対照A群(5%未満の減量または無し)ー99人

【10%減量目標グループ】
・減量B群(10%以上の減量)ー56人
・対照B群(10%未満の減量または無し)ー99人

体重管理プログラムの後、治療成績に与えた影響は、以下の通りでした。

・5%減量目標グループ
減量A群では、対照A群と比べ、治療に使用するゴナドトロピンの量が少なく済んだということです。
一方、採卵数、受精率、良好な受精卵の数、妊娠率、流産率、生児獲得率には明らかな違いは見られませんでした。

・10%減量目標グループ
5%減量目標グループと同様、減量B群では、対照B群と比べ、治療に使用するゴナドトロピンの量が少なく済んだということです。
また、流産率には差はありませんでしたが、減量B群では、対照B群にくらべ、妊娠率や生児獲得率が高かったということです。

結論として、肥満の体外受精患者は、3〜6ヶ月で体重を5%減らすことで、妊娠率や生児獲得率は改善されませんでしたが、ゴナドトロピンの投与量は減少しました。
一方、体重を10%減らすと、ゴナドトロピンの投与量が大きく減少し、妊娠率や生児獲得率が向上する可能性があることがわかりました。

<コメント>
これまでさまざまな研究によって、やせすぎや肥満が妊娠や出産にマイナスの影響を及ぼすことが明らかになっています。

BMIは以下の計算によって、算出することができます。
BMI=体重(kg)÷身長(m)の2乗

これまでの多くの研究で妊娠、出産に最適なBMIの範囲は、日本人では20~23とされています。
今回の研究の結果によると、お子さんを望む肥満の女性は、生活習慣や食生活を見直し、体重の10%を減量することで、妊娠や出産に良い影響がありそうです。

ただし、ダイエットにあたっては、単純に食事を減らすのではなく、積極的に体を動かすことと、必要な栄養素まで減らしてしまわないよう、注意が必要です。

具体的には、揚げ物やスナック菓子などによるエネルギーの摂りすぎを減らすこと、野菜や果物、タンパク質はしっかりと摂ること、体脂肪が蓄積されやすくなる22時以降の遅い時間の飲食を控えることがポイントとなります。