母児の健康 食生活 (栄養)

BMIと年齢の不妊治療成績への影響

細川忠宏

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38歳以上で肥満や過体重の不妊女性では、短期間(3ヶ月程度)で大幅な体重減少が不妊治療の成績に良い結果をもたらすことが示されました。

不妊治療の成績にはBMIと年齢が影響を及ぼすため、肥満や過体重で、かつ高齢の女性の場合、ダイエットを行ったあとに治療を開始するか、またはすぐに治療を開始すべきかについては明確な答えがありませんでした。

今回ポルトガルの研究者たちは、不妊治療を行う女性患者を対象に、BMIや年齢が治療成績にどのように影響したかの研究を実施しました。

研究では、18の不妊治療クリニックにおいて、2013年1月~2018年2月の間に初めて体外受精や顕微授精とその後の胚移植を受けた女性14,213人を対象としました。

対象者をBMIごとに低体重(18.5未満)、標準体重(18.5~24.9)、過体重(25.0~29.9)、肥満(≥30.0)の4グループにわけました。

そして累積生児獲得率*や妊娠までに要した期間と、年齢やBMIとの関連を分析しました。

なお、体重の増減に関する分析では、統計の手法を使って推定された数値が用いられました。

分析の結果、標準体重のグループの女性と比べて、過体重や肥満のグループの女性は累積生児獲得率が明らかに低いことが分かりました。

また、1年以内にBMIを肥満から過体重、過体重から標準体重に減量することは、35歳までであれば治療結果に対して良い影響があるかもしれないが、36~38歳では治療結果にはさほど影響はみられませんでした。

さらに、38歳以上の女性においては、1年間にかなり減量を行ったとしても年齢によるマイナスの影響を補うことはできませんでした。

より短期間(3ヶ月)での減量については、33.25歳までの女性でBMIが1、33.50~35.50歳でBMIが2、35.75-37.25歳の女性ではBMIで3、37.50-39.00歳の女性では4、39.25歳以上の女性では5以上のBMIの減少によって、不妊治療での結果に良い影響を与える可能性が示されました。

以上から、BMIが25以上で35歳未満の女性では、不妊治療開始の前の1年以内に減量を行うことが、良い影響につながる可能性が示されました。
一方35歳以上の女性では、より短期間でかなりの減量を行う必要があることが分かりました。

*累積生児獲得率:ある時点までに女性が平均的に出産する子供の数

<コメント>
BMIと治療成績の関係についての研究は今までも多く行われてきましたが、今回の研究は、年齢との関連についても分析がされています。

今回の研究によると、BMIが25以上の女性では、年齢によってどれほどのダイエットが有効であるか、またダイエットの実施期間についても違いがみられることが分かったということです。

BMIは以下の計算によって、算出することができます。
BMI=体重(kg)÷身長(m)の2乗

これまでの多くの研究で妊娠、出産に最適なBMIの範囲は、日本人では20~23とされています。

今回の研究によって、年齢が高くなるほど、急激なダイエットが必要であることが示されていますが、ダイエットにあたっては、単純に食事を減らすのではなく、積極的に体を動かすことと、必要な栄養素まで減らしてしまわないよう、注意が必要です。

具体的には、揚げ物やスナック菓子などによるエネルギーの摂りすぎを減らすこと、野菜や果物、タンパク質はしっかりと摂ること、体脂肪が蓄積されやすくなる22時以降の遅い時間の飲食を控えることがポイントとなります。