大豆食品の摂取と体外受精や顕微授精の治療成績との関係
大豆食品の摂取は体外受精や顕微授精の高い出産率に関連することがアメリカの研究(EARTH study)で明らかになりました。
ハーバード公衆衛生大学院の研究チームは、EARTH研究(マサチューセッツ総合病院で高度生殖補助医療を受けているカップルを対象に治療成績に影響する要因について調べる前向きコホート研究で2006年にスタートして現在も進行中)に参加している315名の女性(18〜46歳)の直近の3ヶ月間の大豆食品の摂取量と520治療周期(2007年〜2013年)の治療成績との関係を調べました。
治療周期前3ヶ月間の大豆食品の摂取量から算出したイソフラボンの摂取量で4つのグループ(イソフラボン摂取量ゼロ、摂取量(低)、摂取量(中)、摂取量(高))に分けたところ、イソフラボン摂取量(低)グループ(0.54-2.64mg/日)の女性の体外受精や顕微授精の出産率は全く大豆イソフラボンを摂取しなかった女性に比べて、1.32倍、摂取量(中)グループ(2.64-7.55mg/日)は1.87倍、摂取量(高)グループ(7.56-27.89mg/日)は1.77倍でした。
このことから、大豆食品の摂取は体外受精や顕微授精の良好な出産率に関連することがわかりました。
大豆に含まれるイソフラボンは代表的な植物性エストロゲンであることから、妊娠を希望する女性、特に、不妊治療を受けている女性にとって関心の高い栄養成分で、納豆や豆腐、味噌、豆乳などの大豆加工食品をたくさん食べるほうがいいのか、あるいは、イソフラボンのサプリメントを摂るほうがいいのか、ことあるごとに質問されます。
今回、ハーバード大学のチャバロ先生を中心とする研究チームはそれに対してとても参考になる研究結果を発表されました。
ハーバード大学医学部の関連病院であるマサチューセッツ総合病院でART治療に臨む女性に直近3ヶ月の大豆食品やイソフラボンの摂取量とその後の体外受精や顕微授精の治療成績との関連を調べたところ大豆食品を全く食べない女性に比べて、大豆食品をそこそこ食べる女性は出産率が高いことがわかったとのこと。
問題はその「量」です。
過去にサプリメントでイソフラボンを摂取すると妊娠率が高くなったとの研究報告が2件ありました。1件はクロミフェンでタイミング指導を受けている原因不明の不妊女性147名を対象にしたもので、1日に120mgのイソフラボンを摂取したグループとクロミフェンだけのグループの妊娠率は36.7%と13.6%だったというもの。
もう1つは体外受精を受けている213名の女性に黄体補充時期に1日1500mgのイソフラボンのサプリメントかプラセボ(偽薬)を飲んでもらったところ妊娠率は30.3%と16.2%で、イソフラボンを飲んだグループのほうが約2倍の妊娠率だったというものです。
いずれの臨床試験でも1日のイソフラボン摂取量は、120mg、1500mgと「大量」です。
過去にサプリメントでイソフラボンを摂取すると妊娠率が高くなったとの研究報告が2件ありました。1件はクロミフェンでタイミング指導を受けている原因不明の不妊女性147名を対象にしたもので、1日に120mgのイソフラボンを摂取したグループとクロミフェンだけのグループの妊娠率は36.7%と13.6%だったというもの。
もう1つは体外受精を受けている213名の女性に黄体補充時期に1日1500mgのイソフラボンのサプリメントかプラセボ(偽薬)を飲んでもらったところ妊娠率は30.3%と16.2%で、イソフラボンを飲んだグループのほうが約2倍の妊娠率だったというものです。
いずれの臨床試験でも1日のイソフラボン摂取量は、120mg、1500mgと「大量」です。
因みに日本では食品安全委員会による大豆イソフラボンの安全な一日摂取目安量の上限値は70〜75mg/日、また、一日上乗せ摂取量(サプリメント)の上限値を30mg/日としていますので、自己判断で摂取するには多すぎる量でした。
また、イソフラボンのサプリメントを摂取した場合、月経サイクルが乱れたり、ホルモン療法にマイナスの影響を及ぼしたりするケースがあり、イソフラボンは自己判断で摂らないように指導するドクターも少なくありません。
今回、チャバロ先生のグループが臨床試験を実施したのも、そのあたりのことを確かめることが目的でした。
今回の試験の被験者の女性の平均の1日のイソフラボンの摂取量は3.4mgでした。全米の成人女性の平均1日3.1mgに近いレベルです。そして、イソフラボン摂取量でみると、大豆食品を食べないグループに比べて、摂取量の少ないグループ(0.54-2.64mg/日)の 出産率は1.32倍、そして、摂取量の中グループ(2.64-7.55mg/日)、 高グループ(7.56-27.89mg)の出産率は1.87倍、1.77倍とほぼ同じです。
つまり、ある程度の量を摂取すればそこから増やしても出産率の向上には寄与しないことを示しています。
このことから、妊娠を希望する女性にとって大豆食品を全く食べないのはよくないが、だからと言って、たくさん摂ればよいというわけでもないということになります。
一方、日本人のイソフラボン摂取は厚生労働省の国民健康栄養調査によると1日16〜22mgですので、日本人の食生活で普通に大豆食品を食べていれば十分だということになります。
参考までに、大豆加工食品に含まれるイソフラボンは、納豆で35mg、豆腐半丁で40mg、豆乳1パック40mgとされています。1日に納豆1パック食べるだけでも十分です。食事で「普通に」大豆食品を食べていれば、それ以上、毎日、豆乳を大量に飲んだりするのは避けたほうが無難かもしれません。
投稿者:細川忠宏