食生活 (栄養)

飲料の摂取と体外受精の治療成績との関係

細川忠宏

news_20171008
砂糖入り清涼飲料水は、カフェインが含まれるか含まれないかに関係なく、砂糖を含まないカフェイン入り飲料に比べて体外受精の治療成績にマイナスの影響を及ぼす可能性のあることがアメリカで実施された研究で明らかになりました。

ハーバード公衆衛生大学院の研究者らは、飲料が体外受精の成績にどのような影響を及ぼすのか調べるべく、2014年1月から2016年8月までに不妊治療(62.1%)や遺伝病の着床前診断(37.9%)のために体外受精を受けた340名の女性(平均年齢:31.5歳)を対象に前向き研究を実施しました。

被験者の女性に、卵巣刺激を開始した日、もしくは、採卵日に、飲料の摂取についての質問票に回答してもらいました。質問票では14種類の飲料を挙げて、飲んでいるかどうか、飲んでいる場合にはその量と頻度について尋ねています。質問票の回答内容からカフェインの摂取量を算出しました。

そして、カフェインやそれぞれの飲料の摂取量と体外受精の治療成績(新鮮胚による1回の移植)の関係が解析されました。

その結果、平均カフェイン摂取量は1日に163.5mg(インスタントコーヒー約2.5杯に相当)でしたが、トータルのカフェイン摂取量と採卵数や成熟卵数、受精卵数、トップクオリティ胚数のいずれとも関連しませんでした。

飲料別の摂取量では、カフェイン入りティーの摂取量が多くなると採卵数や成熟卵数が有意に少なく、反対にハーブティーの摂取量が多いと採卵数や成熟採卵数が有意に多かったとのこと。

特に、砂糖入り清涼飲料水の摂取量が多いと総採卵数や成熟卵数、されには、受精卵数や良好胚数も有意に少なく、砂糖入り清涼飲料を飲む女性は飲まない女性に比べて、平均、採卵数が1.1個、成熟卵数が1.2個、受精卵数が0.6個、少なかったことがわかりました。

また、283回の胚移植の結果、116例のhCG陽性、102例の臨床妊娠、そして、83例が出産に至りましたが、カフェイン摂取量はいずれの成績とも関連しなかったのに対して、砂糖入り清涼飲料水の摂取量が多いほど臨床妊娠率、出産率が有意に低くなり、砂糖入り清涼飲料水を1日に0.1から1杯飲む女性は飲まない女性に比べて、出産まで至った確率が12%、1日に1杯以上飲む女性になると飲まない女性に比べて16%低かったとのこと。

尚、カフェイン入りティーやハーブティーは妊娠率や出産率には関連しませんでした。

これらのデータから、砂糖入り清涼飲料水は、カフェインを含む含まないに関係なく、体外受精の治療成績にマイナスの影響を及ぼす可能性があると結論づけています。

カフェイン入りティーが採卵数や成熟卵数が少なかったことと関連したのは、そこに入れられた砂糖の影響ではないかと考えているようです。そして、砂糖入り清涼飲料水が生殖機能に悪さを働くのは、糖の代謝異常を介するものというのが専門家の一致した見解です。

砂糖入り清涼飲料水に含まれている砂糖のは、私たちが飲み物に入れる砂糖の量を遥かに超える量です。

たとえば、各飲料に含まれる砂糖をスティックシュガーの本数に換算すると、スポーツドリンク500ml中には7〜18本分、野菜や果物ジュースで5〜8本、炭酸飲料に至っては14〜20本です。

現実にはこれだけの量を摂取することはありませんというか、出来ませんが、清涼飲料水には飲みやすく加工されているので、美味しく飲めるようになると言われています。

そのため、吸収の早い糖類を大量に飲むことになり、高血糖状態を招きます。そうすると喉が渇きますので、さらに砂糖入り清涼飲料水を飲むことになり、この悪循環が糖の代謝異常を招くことになります。

そして、糖の代謝異常が招く、高血糖や高インスリンは卵子や胚の成育を障害することが知られています。そもそも、砂糖入り清涼飲料水は同じメカニズムで細胞老化を引き起こし、さまざまな生活習慣病のリスクの上昇につながることが明らかになっています。そのため、砂糖入り清涼飲料水に20%以上の課税をすることで、肥満や糖尿病、虫歯などで苦しむ患者を減らせると、世界保健機関(WHO)が提言しているほどです。