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ファイトケミカルの摂取と細菌性腟症リスクの関係

細川忠宏

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食事からのファイトケミカルの摂取量が多いほど細菌性腟症のリスクが低下することが、イランで実施された研究により示されました。

ファイトケミカル(phytochemical)とは、植物を意味するファイト(phyto)と化学を意味するケミカル(chemical)が合わさった「植物性化学成分」のことで、植物が紫外線や昆虫など、植物にとって有害なものから自らを守るために作りだす成分です。ファイトケミカルにはポリフェノール、カロテノイド、含硫化合物があり、これまで数千種類の成分が発見されています。主な働きとして、抗酸化作用や抗菌作用などが知られています。

そこで、イランの研究グループはファイトケミカルの抗菌作用に着目し、食事からのファイトケミカルの摂取と細菌性腟症の発症リスクとの関連について調べました。

2020年11月から2021年6月までの間に細菌性腟症と診断された女性151名と、細菌性腟症ではない女性143名を対象としました。
参加者に対し食事に関するアンケート調査を実施し、ファイトケミカル指数(食事中のカロリーのうち、ファイトケミカルを含む食品のカロリーが占める割合)を算出、ファイトケミカルの摂取量と細菌性腟症の関連性を分析しました。

その結果、食事からのファイトケミカルの摂取が少ないほど、細菌性腟症の発症リスクが上がることが分かりました。また、脂肪の摂取量の増加も細菌性腟症の発症リスク増加に関連していることが分かりました。さらに、家族歴に細菌性腟症がみられる場合も、細菌性腟症のリスクが高くなることも示されました。

これらのデータにより、食事からのファイトケミカルの摂取量の増加は、細菌性腟症リスクの低減につながる可能性があることが示されました。

<コメント>
ファイトケミカルはさまざまな野菜や果物に含まれ、抗菌作用があることがよく知られています。これまで、ポリフェノールが腸内環境を調整する可能性があることを示す報告がいくつもなされていたり、多種多様なポリフェノールを含むクランベリーが女性の尿路感染症の予防に有効であるという報告がなされています。

今回の関連性は、ファイトケミカルの摂取の直接的な影響もさることながら、ファイトケミカルが多い女性は腸内の乳酸菌が多く、そのことが腟内の細菌環境にも良い影響を及ぼし、細菌性腟症の予防につながったという間接的な影響によるものかもしれません。

ファイトケミカルの抗菌作用は抗菌薬に比べてきわめて穏やかな作用であると考えられますが、生殖器内の細菌環境に良い影響を及ぼす可能性があります。