ビタミン

男性不妊患者へのビタミンDの補充効果:無作為化比較対照試験

細川忠宏

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ビタミンDが不足している男性不妊患者のビタミンDとカルシウムのサプリメント補充は精液所見の改善やパートナーの出産率への効果は見出せませんでしたが、乏精子症の男性に限ればパートナーの出産率が向上することがデンマークで実施された無作為化比較対照試験によって明らかになりました。

コペンハーゲン大学の研究グループは、単一施設の1427名の男性不妊患者から、ビタミンDの濃度低値「ビタミンDの指標である25(OH)Dが50nmol/l以下」で、試験の参加に同意した330名を、無作為に2つのグループにわけ、一方のグループ(164名)には、試験開始時に300,000IUのVDのサプリメントを飲んでもらい、その後、1日に1400IUのVDと500mgのカルシウムを、もう一方のグループ(166名)にはプラセボ(偽薬)を、それぞれ、150日間飲んでもらい、精液所見やパートナーの出産率などを比較しました。

その結果、ビタミンDの濃度はビタミンDのサプリメントを飲んでもらったグループのほうがプラセボを飲んでもらったグループよりも有意に上昇しましたが、総精子数や精子濃度、精子運動率には差は認められませんでした。また、試験期間内にパートナーが出産に至った割合もサプリメントグループのほうがプラセボグループに比べて高かった(7.3% 対 2.4%)ものの有意な差ではありませんでした。

ところが、乏精子症の患者だけに限ると、精液所見では差はありませんでしたが、インヒビンBというホルモン濃度(193pg/ml 対 143pg/ml)や試験期間内にパートナーが出産に至った割合(35.6% 対 18.3%)はサプリメントグループのほうがプラセボグループよりも有意に増加していました。

このことからビタミンDが不足している乏精子症の男性不妊患者では高用量のビタミンDとカルシウムのサプリメント摂取はプラスの影響を及ぼす可能性があることがわかりました。

ビタミンDは、従来、カルシウムの吸収を促進し、骨をつよくする働きのある脂溶性(油に溶ける)ビタミンとして知られていましたが、最近は妊娠や出産に際しても重要な役割を担っていることが多くの研究でわかってきました。

ただし、それは、主に女性の生殖機能との関連についての研究で、男性の生殖機能については動物実験や横断研究で関連が示唆されているに止まっていました。

デンマークのコペンハーゲン大学の研究グループは、これまでビタミンDと男性の生殖機能の関連について、多くの研究報告を行っていますが、今回、ビタミンDが不足している男性不妊患者を対象に、単一施設三重盲検無作為化比較対照試験を実施し、ビタミンDとカルシウムのサプリメントの補充効果を検証しました。

結果は、乏精子症の男性不妊患者では効果があるかもしれないとうものでした。

今後の研究に注目したいと思います。

出典:J Clin Endocrinol Metab.2018; 103(3), 870–881