飲料の摂取量と精子の質やART成績との関係
各種飲料の摂取量と精液検査結果や不妊治療成績との関連を調べた研究で、コーヒーや紅茶、アルコール度数の高い酒類の摂取量が多いと生児獲得率が低くなり、ビールの摂取量が多いと生児獲得率が高くなることが示されました。
カフェイン入り飲料やアルコール飲料を含むさまざまな飲料と男性の精液検査結果の関係について、今まで多くの研究がなされています。
一方で男性の妊孕能(妊娠させる力)の指標としては精液検査結果よりも不妊治療成績の方が適していると考えられるため、ハーバード公衆衛生大学院の研究グループは、さまざまな飲料と精液検査の結果および不妊治療成績との関連を調べました。
EART研究*に参加し、2007年から2019年の間に少なくとも1回のART治療を受けた女性の男性パートナーを対象に食事に関するアンケートを実施し、飲料の摂取量について調査しました。摂取量について調べた飲料はカフェイン飲料、アルコール飲料、砂糖入り飲料、人工甘味料入り飲料の4種類でした。
アンケート結果から各飲料の摂取量によって4つのグループに分け、精液検査の結果や治療成績との関連を調べました。
その結果、カフェイン入り飲料、アルコール入り飲料、砂糖入り飲料、人工甘味料入り飲料のいずれの飲料の摂取量も、精液検査の結果や治療成績(受精、着床、臨床的妊娠、生児獲得)とは関連していませんでした。
ただし、特定の治療方法や飲料の種類についてさらに関連を調べたところ、体外受精を受けているカップルにおいてはカフェインを含むコーヒーや紅茶の摂取量が多いほど、生児出生確率が低いことがわかりました。摂取量の最も少ないグループと最も多いグループの生児出生確率は、カフェイン入りコーヒーでそれぞれ49%と33%、カフェイン入り紅茶ではそれぞれ49%と31%でした。
また、アルコール度数の高い酒類の摂取量と生児獲得率についても同様の傾向がみられ、それぞれ45%32%でした。反対に、ビールの摂取量が多いほど生児獲得率が高いという関連もみられ、それぞれ32%と51%でした。
*マサチューセッツ総合病院で不妊治療を受けているカップルを対象に、治療成績に影響する要因について調査が行われている現在進行中の研究。
<コメント>
カフェインやアルコール飲料と精子の質の関連については今までもさまざまな研究がなされていますが、今回の研究では体外受精を受けているカップルにおいて、カフェインやアルコール(ビールを除く)の摂取が治療成績にマイナスの影響がある可能性が示されました。
カフェインの適切な摂取量についてはさまざまな調査が行われていますが、厚生労働省やカナダの保健省では1日に400mgまでを目安量として推奨しています。(コーヒー1杯におよそ60mgのカフェインが含まれます。)
アルコールについては、厚生労働省において節度ある飲酒量として純アルコール量20gを目安とすることを推奨しています。純アルコール量20gとは、缶チューハイや缶ビールではロング缶1本、ワインではグラスに1.5杯に相当します。
アルコールは男性にとって大切なミネラルである亜鉛の吸収を妨げてしまうことからも、妊活中の男性はほどほどにした方が良いかもしれません。
以下に、アルコール飲料を減らすコツをお伝えします。出来る事からとり入れてみましょう。
・ノンアルコールや微アルコール飲料を摂り入れる。
・食事をある程度摂取してからアルコールを摂るようにする。
・飲む時間帯を決めて、長時間飲まないようにする。
・家族や周りの人にアルコールを減らすことを宣言し、応援してもらう。
・二次会には行かないようにする。