ビタミン

妊娠前の血中ビタミンD濃度が不妊治療成績に及ぼす影響

細川忠宏

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妊娠前に血中ビタミンD濃度が適切なカップルは出産率が高く、不足しているカップルは低くなる可能性が示されました。

この研究は、プレコンセプション期(妊娠前)の血中ビタミンDの濃度が不妊治療の成績にあたえる影響を調査したものです。target trial emulation(理想的な臨床試験の模倣)という、実際にヒトでの試験を行うことが難しい場合に、過去の研究データを用いて臨床試験に近い設計を再現する手法を用いて行われた調査です。

調査には4つの不妊治療施設で実施されたアメリカの研究データが用いられました。そして妊娠前のカップルの血中ビタミンD濃度や関連する血液中の成分、精液検査の結果、BMIと、その後の妊娠や出産との関連が調査されました。

対象となったのは2,370組のカップルで、そのうち女性は19.5%、男性は29.9%がビタミンD欠乏でした。

分析の結果、ビタミンDが充足状態にある女性は欠乏している女性に比べて出産に至る可能性が28%高いことがわかりました。

特に肥満度が正常な男性や女性、および肥満の女性で、血中ビタミンDの充足度が出産に至るかどうかに関連が見られました。

パートナーが共にビタミンD欠乏でないカップルは、共に欠乏しているカップルと比較して、出産に至る可能性が高いことが分かりました。

なお、カルシウムなどの血液中の成分や精液検査の結果との関連はみられませんでした。

以上の結果から、妊娠前のビタミンDの状態がカップルの妊娠しやすさに影響を及ぼすことがわかりました。

<コメント>
妊娠を希望するカップルは、女性のみならず男性もビタミンDの不足に注意する必要があるかもしれません。

昨年日本人の不妊治療中の女性を対象に行われた研究では、参加者の93.5%でビタミンDが不足していたという報告がなされています。

日本人は特に紫外線を避ける傾向にありますが、必要な量の多くは紫外線を浴びることで体内でつくられます。特に日照時間の短くなる冬季はさらに不足に注意が必要です。

ビタミンDの充足のためには、意識して日に当たり、また必要に応じてサプリメントでの補充も検討するとよいかもしれません。