鉄の摂取量と妊娠しやすさとの関係
食事からのトータル(ヘム鉄と非ヘム鉄)の鉄の摂取量と妊娠しやすさは関連しませんでした。ただし、デンマークではなく、北米のみで、食事からの非ヘム鉄の摂取量や鉄のサプリメントと妊娠しやすさは、わずかな正の相関が見られ、特に、過多月経や短い月経周期、さらには出産経験のある、潜在的な鉄不足の女性の間では顕著であることが、北米とデンマークで実施された前向きコホート研究で明らかになりました。
ボストン大学公衆衛生学部の研究者らは、食事やサプリメントの鉄摂取量と妊娠しやすさの関係を調査すべく、北米とデンマークで実施された2つの研究で得られたデータを解析しました。
いずれも妊娠希望の女性を対象とした前向きコホート研究(北米のPRESTO研究:n=2969名、デンマークのSnart Foraeldre研究:n=1693)で、2013-2018年に、8週間ごとに食物摂取頻度調査票に回答してもらい、1年間、或いは妊娠するまで継続してもらいました。
◎1日の平均鉄摂取量
PRESTO研究(カナダ&アメリカ) :10.4mg(非ヘム鉄 9.7mg、ヘム鉄 0.7mg)
Snart Foraeldre研究(デンマーク):12.1mg(非ヘム鉄 11.5mg、ヘム鉄 0.6mg)
それぞれの研究において、食事からのトータルの鉄、非ヘム鉄、ヘム鉄の摂取量で、高摂取群、中摂取群、低摂取群の3つのグループにわけ、妊娠するまでにかかった期間から算出した妊娠確率を低摂取群を1として比較しました。
その結果は以下の通りでした。
◎食事からのトータルの鉄、ヘム鉄、非ヘム鉄の摂取量と妊娠しやすさの関係
デンマークの研究においても、北米の研究においても、高摂取群(12mg/日以上)も中摂取群(10-11.9mg/日)も、低摂取群(10mg/日未満)と妊娠しやすさは変わらず、いずれの研究においても、食事からの鉄の摂取量と妊娠しやすさは変わりませんでした。
また、食事からのヘム鉄摂取量においても同様で、高摂取群(1.0mg/日以上)も中摂取群(0.5-0.9mg/日)、低摂取群(0.5mg/日未満)と妊娠しやすさは変わりませんでした。
ただし、食事からの非ヘム鉄は、高摂取群(11mg/日以上)は低摂取群(9mg/日未満)に比べると、妊娠確率が、デンマークの研究では1.11 (95% CI: 0.92, 1.34) 、北米の研究では、1.01(95% CI: 0.89, 1.14) と有意差はないもののわずかに高い傾向が見られました。
◎経産婦と出産未経験者にわけてみると
デンマークの研究でも、北米の研究でも、出産経験者では、トータルの鉄と非ヘム鉄の摂取量で、高摂取群は低摂取群よりもわずかながら妊娠確率が高い傾向がみられました。
一方、出産未経験者では関連はみられなかった。
◎過多月経や頻発月経(月経周期が短い)と正常な月経にわけてみると
北米での研究のおいてのみ、過多月経や頻発月経、あるいは、いずれにもあてはまる女性の妊娠確率は、非ヘム鉄摂取量の低摂取群に比べて、中摂取群は1.31(95% CI:0.97, 1.78)、高摂取群は1.54(95% CI:1.16, 2.04)と非ヘム鉄摂取量が多いほど妊娠しやすくなりました。
◎サプリメント摂取量と妊娠しやすさの関係
デンマークの研究では、鉄を含むサプリメント使用者と非使用者で、妊娠しやすさは変わりませんでした(FR:1.01; 95% CI:0.90, 1.13)。ところが、北米の研究では、サプリメント使用者がわずかに妊娠しやすいことがわかりました(FR: 1.19; 95% CI:1.03, 1.38)。
同様の結果が、鉄のみのサプリメントでも見られました。
また、北米の研究では、過多月経や頻発月経の女性において、鉄を含むマルチビタミンミネラル(FR:1.57; 95% CI 1.16, 2.12)、鉄サプリメント使用(FR:1.62; 95% CI 1.10, 2.37)は非使用者に比べて、妊娠確率が有意に高いことがわかりました。。
以上のように食事からのトータルの鉄やヘム鉄は摂取量に関わらず妊娠しやすさは変わりませんでした。
一方、非ヘム鉄とサプリメントについては、北米の研究でのみ、鉄が不足していると考えられる女性にとっては食事からの非ヘム鉄や鉄のサプリメントの摂取は高い妊娠確率に関連しました。
鉄の摂取と妊娠しやすさの関係については、これまでハーバード大学の看護師健康調査Ⅱで、非ヘム鉄や鉄サプリメントの摂取量が多いほど排卵障害の不妊症のリスクが低いという研究報告がなされているだけでした。
今回、ボストン大学から鉄の摂取量と妊娠しやすさの関係について解析したデンマークと北米で実施された前向きコホート研究の結果が発表されました。
それによると、鉄の摂取量と妊娠しやすさは関連しないが、食事からの非ヘム鉄と鉄のサプリメント補充は、鉄が不足している女性にとっては有益かもしれないというものでした。
ただし、鉄が不足している女性への非ヘム鉄や鉄のサプリメントが有益かもしれないというデータは北米での研究のみで、デンマークの研究では見られていません。
食事からの鉄の摂取量について、ヘム鉄でなく、非ヘム鉄の摂取量が妊娠しやすさと関連したのかについては、それらが含まれる食品の違いによるものではないかとしています。
要するに非ヘム鉄は野菜などの植物性食品に、ヘム鉄は肉類などの動物性食品に豊富に含まれています。
また、デンマークと北米の研究結果の違いについては、元々、北米はヘム鉄の摂取量がデンマークよりも多く、非ヘム鉄の摂取量が少ない傾向にあることが関係しているのではないかと推測しています。
鉄は、ヘモグロビンや各種酵素の構成要素となる栄養素で、最も代表的な働きは、ヘモグロビンとして赤血球の中で働き、酸素運搬や細胞呼吸を助けることで、不足すると鉄欠乏性牝貧血を招いてしまいます。
妊娠、出産に際しては必要とされる量が多くなり、重要なミネラルです。
ところが、妊娠しやすさとの関係はほとんど知られていませんでしたので、そういう意味で今回の研究結果は貴重です。
鉄は葉酸やビタミンDほどには摂取量と妊娠しやすさと関連しているわけではないようです。それよりも過剰な摂取は酸化ストレスや糖代謝異常を招くリスクが高くなり、マイナスの影響を及ぼしてしまいかねません。
ボストン大学公衆衛生学部の研究者らは、食事やサプリメントの鉄摂取量と妊娠しやすさの関係を調査すべく、北米とデンマークで実施された2つの研究で得られたデータを解析しました。
いずれも妊娠希望の女性を対象とした前向きコホート研究(北米のPRESTO研究:n=2969名、デンマークのSnart Foraeldre研究:n=1693)で、2013-2018年に、8週間ごとに食物摂取頻度調査票に回答してもらい、1年間、或いは妊娠するまで継続してもらいました。
◎1日の平均鉄摂取量
PRESTO研究(カナダ&アメリカ) :10.4mg(非ヘム鉄 9.7mg、ヘム鉄 0.7mg)
Snart Foraeldre研究(デンマーク):12.1mg(非ヘム鉄 11.5mg、ヘム鉄 0.6mg)
それぞれの研究において、食事からのトータルの鉄、非ヘム鉄、ヘム鉄の摂取量で、高摂取群、中摂取群、低摂取群の3つのグループにわけ、妊娠するまでにかかった期間から算出した妊娠確率を低摂取群を1として比較しました。
その結果は以下の通りでした。
◎食事からのトータルの鉄、ヘム鉄、非ヘム鉄の摂取量と妊娠しやすさの関係
デンマークの研究においても、北米の研究においても、高摂取群(12mg/日以上)も中摂取群(10-11.9mg/日)も、低摂取群(10mg/日未満)と妊娠しやすさは変わらず、いずれの研究においても、食事からの鉄の摂取量と妊娠しやすさは変わりませんでした。
また、食事からのヘム鉄摂取量においても同様で、高摂取群(1.0mg/日以上)も中摂取群(0.5-0.9mg/日)、低摂取群(0.5mg/日未満)と妊娠しやすさは変わりませんでした。
ただし、食事からの非ヘム鉄は、高摂取群(11mg/日以上)は低摂取群(9mg/日未満)に比べると、妊娠確率が、デンマークの研究では1.11 (95% CI: 0.92, 1.34) 、北米の研究では、1.01(95% CI: 0.89, 1.14) と有意差はないもののわずかに高い傾向が見られました。
◎経産婦と出産未経験者にわけてみると
デンマークの研究でも、北米の研究でも、出産経験者では、トータルの鉄と非ヘム鉄の摂取量で、高摂取群は低摂取群よりもわずかながら妊娠確率が高い傾向がみられました。
一方、出産未経験者では関連はみられなかった。
◎過多月経や頻発月経(月経周期が短い)と正常な月経にわけてみると
北米での研究のおいてのみ、過多月経や頻発月経、あるいは、いずれにもあてはまる女性の妊娠確率は、非ヘム鉄摂取量の低摂取群に比べて、中摂取群は1.31(95% CI:0.97, 1.78)、高摂取群は1.54(95% CI:1.16, 2.04)と非ヘム鉄摂取量が多いほど妊娠しやすくなりました。
◎サプリメント摂取量と妊娠しやすさの関係
デンマークの研究では、鉄を含むサプリメント使用者と非使用者で、妊娠しやすさは変わりませんでした(FR:1.01; 95% CI:0.90, 1.13)。ところが、北米の研究では、サプリメント使用者がわずかに妊娠しやすいことがわかりました(FR: 1.19; 95% CI:1.03, 1.38)。
同様の結果が、鉄のみのサプリメントでも見られました。
また、北米の研究では、過多月経や頻発月経の女性において、鉄を含むマルチビタミンミネラル(FR:1.57; 95% CI 1.16, 2.12)、鉄サプリメント使用(FR:1.62; 95% CI 1.10, 2.37)は非使用者に比べて、妊娠確率が有意に高いことがわかりました。。
以上のように食事からのトータルの鉄やヘム鉄は摂取量に関わらず妊娠しやすさは変わりませんでした。
一方、非ヘム鉄とサプリメントについては、北米の研究でのみ、鉄が不足していると考えられる女性にとっては食事からの非ヘム鉄や鉄のサプリメントの摂取は高い妊娠確率に関連しました。
鉄の摂取と妊娠しやすさの関係については、これまでハーバード大学の看護師健康調査Ⅱで、非ヘム鉄や鉄サプリメントの摂取量が多いほど排卵障害の不妊症のリスクが低いという研究報告がなされているだけでした。
今回、ボストン大学から鉄の摂取量と妊娠しやすさの関係について解析したデンマークと北米で実施された前向きコホート研究の結果が発表されました。
それによると、鉄の摂取量と妊娠しやすさは関連しないが、食事からの非ヘム鉄と鉄のサプリメント補充は、鉄が不足している女性にとっては有益かもしれないというものでした。
ただし、鉄が不足している女性への非ヘム鉄や鉄のサプリメントが有益かもしれないというデータは北米での研究のみで、デンマークの研究では見られていません。
食事からの鉄の摂取量について、ヘム鉄でなく、非ヘム鉄の摂取量が妊娠しやすさと関連したのかについては、それらが含まれる食品の違いによるものではないかとしています。
要するに非ヘム鉄は野菜などの植物性食品に、ヘム鉄は肉類などの動物性食品に豊富に含まれています。
また、デンマークと北米の研究結果の違いについては、元々、北米はヘム鉄の摂取量がデンマークよりも多く、非ヘム鉄の摂取量が少ない傾向にあることが関係しているのではないかと推測しています。
鉄は、ヘモグロビンや各種酵素の構成要素となる栄養素で、最も代表的な働きは、ヘモグロビンとして赤血球の中で働き、酸素運搬や細胞呼吸を助けることで、不足すると鉄欠乏性牝貧血を招いてしまいます。
妊娠、出産に際しては必要とされる量が多くなり、重要なミネラルです。
ところが、妊娠しやすさとの関係はほとんど知られていませんでしたので、そういう意味で今回の研究結果は貴重です。
鉄は葉酸やビタミンDほどには摂取量と妊娠しやすさと関連しているわけではないようです。それよりも過剰な摂取は酸化ストレスや糖代謝異常を招くリスクが高くなり、マイナスの影響を及ぼしてしまいかねません。