ビタミン

日本人女性不妊患者のほとんどはビタミンDが不足している

細川忠宏

Fig2-1
日本の不妊症の女性のうち、ビタミンDが充足しているのはわずか6.5%で、不足が28%、欠乏が65.5%と、93.5%でビタミンDが不足していることが、約2000人の女性を対象にした調査で明らかになりました。

ビタミンDは骨の健康に関連する脂溶性ビタミンですが、細胞の増殖・分化、免疫の調節に深く関わることから、妊娠や出産において非常に重要な役割を果たすことは広く知られるようになりました。
ところが、必要なビタミンDのほとんどが、紫外線を浴びることで体内でつくられることから、多くの女性で不足していることも知られています。
ただ、これまでに不妊女性とビタミンDの充足度に関する研究はなされていませんでした。 

そこで、関東の不妊治療クリニックで、2016年9月から2021年12月までの期間にクリニックを受診した2029人の女性について、血清25(OH)Dや、季節ごとの変動、また卵巣の予備能や免疫マーカーとの関連性を調査しました。

(25(OH)Dは、ビタミンDの過不足を知るための指標されています。血中の25(OH)Dが30ng/mL以上で充足、20〜30ng/mLで不足、20ng/mL未満で欠乏とされています。)

その結果、平均血清25OH)Dは18.2±7.0ng/mLで、充足している人は6.7%、不足している人は28.0%、欠乏している人は65.5%で、93.5%がビタミンDが不足していることが判明しました。

季節ごとの25(OH)D濃度を統計的に分析したところ、冬以外の季節では25(OH)D濃度が有意に高いことが確認されました。

この研究から、日本の生殖年齢の不妊女性のほとんどでビタミンDが不足や欠乏状態であり、わずか6%しか十分なビタミンD濃度が得られていないことがわかりました。
また特に2月の冬季に最も低い濃度となることが明らかとなっています。

<コメント>
最近の研究から、ビタミンDはよい卵子をつくったり、子宮内膜を着床に適した状態にするなど、妊娠・出産にも深く関わっていることがわかってきており、ビタミンD濃度が高いほど体外受精の成績が良いとの研究報告もあります。

今回の研究で、日本人のなんと93.5%でビタミンDが不足しており、日照時間の少なくなる冬季でもっとも低くなることがわかりました。

日本人は特に紫外線を避ける傾向にありますが、ビタミンD不足を回避する基本的な方法は、日光にあたることです。

ビタミンDの充足のためには、意識して日に当たり、また必要に応じてサプリメントで補充することが必要といえるでしょう。