グリセミックインデックスやグリセミック負荷と妊娠しやすさとの関係
一般のカップルを対象にした研究で、女性の高GIや高GLは妊娠しやすさと関連しませんでしたが、男性では高GIや高GLが妊娠しやすさの低下に関連することが明らかになりました。
GI(グリセミックインデックス)*1 は食後血糖値の上昇に着目し、GL(グリセミック負荷)*2 は血糖値と糖質の量に着目した指標で、炭水化物の質と量を表します。
オランダのエラスムス大学医療センターの研究グループは、「Generation R Next Study*3」に参加しているカップルを対象に、妊娠前後のGIやGLと妊娠しやすさとの関連を調査しました。
対象となった880名の女性とそのパートナーである651名の男性に、妊娠12.4週時点で食事調査を実施し、それぞれのGIとGLを算出しました。妊娠までの期間が1年未満を正常な妊孕能(妊娠しやすさ)とし、1年以上、もしくは生殖補助医療を受けて妊娠した場合を妊孕能低下と定義し、それらの関連を調べました。
妊娠期間中の女性の平均食事性GI値は56.2、GL値は141.4でした。男性の平均食事性GI値は56.8、GL値は156.7でした。妊娠までにかかった期間の中央値は4.8ヶ月で、半数のカップルが1.2~16.4ヶ月の間に妊娠しました。
データを分析した結果、女性においてGIやGLは妊孕能低下との関連は認められませんでした。一方で、男性においては高GIや高GLは妊孕能低下と関連することがわかりました。
さらに女性と男性のGIがあたえる複合的な影響を分析した結果、男女ともに低GI食を実施しているカップルは妊孕能も高い傾向があることがわかりましたが、不妊症リスクとの関連はみられませんでした。
以上の結果から、男性の炭水化物摂取量が適切でない場合、妊娠しやすさの低下につながることが分かった一方で、女性では関連性はみられませんでした。
なお、低GIおよび低GL食を実施することで妊娠しやすさの改善につながるかどうかについては、さらなる研究が必要であると結論づけています。
*1) グリセミックインデックス(Glycemic Index)とは食後血糖値の上昇を示す指標。食事から2時間後までの血糖値の上昇を標準食(ブドウ糖、白米飯、食パン)を100%としてグラフ化し、その面積比で示される。
*2) グリセミックロード(Glycemic Load)とは、糖質量を考慮し、食品に含まれる糖質の重量にGIをかけて100で割ったもの(GL=各食品が含有する炭水化物の量[g] × GI ÷ 100)。
*3) オランダのロッテルダムを拠点とし、胎児期から成人期までの長期にわたる追跡調査を行い、子供の身体的、精神的、社会的な発達に影響を与える要因を明らかにすることを目的とした研究。
<コメント>
今回オランダで行われた研究ではカップルのうち、女性ではGIやGL値と妊娠しやすさとの関連はみられず、男性でのみ関連がみられました。
女性については、これまで2つの研究で食事のGIやGLと妊娠しやすさとの関連が報告されています。
1つはアメリカで18,555人の健康な女性を対象として行われた大規模な研究で、食事性GIやGLが排卵障害による不妊症と関連することが確認されています。注目すべきは、食事性GIとの関連は未産婦に限って観察されたことです。
もう1つは、デンマークと北米で行われたウェブベースのアンケートを用いた研究で、高GL食は女性の妊孕能低下と関連するとの報告がなされています。