食生活 (栄養)

低炭水化物食がメタボリック症候群の男性における性機能改善の可能性

細川忠宏

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メタボリック症候群によって性腺機能が低下*した男性において、低炭水化物食がホルモンの状態や性機能を改善する可能性が報告されています。

メタボリック症候群は性腺機能の低下を伴うことが多く、勃起不全やホルモン分泌の低下リスクが高くなることがわかってきています。

また、摂取する炭水化物の量を制限する低炭水化物食は、減量や糖代謝の改善につながるという報告があります。

そこでブラジルの研究者グループは、メタボリック症候群で性腺機能が低下した男性について、低炭水化物食を実施することでテストステロンの増加や勃起不全の改善につながるかを調べました。

メタボリック症候群でテストステロン値が正常でないと診断された18歳以上の男性(心筋症や心不全、腫瘍性疾患、肝臓疾患、勃起不全の治療中や特定の薬剤の使用、肥満手術、食物アレルギーなどの男性を除く)18名をランダムに2グループに分け、食事内容による比較を行いました。

一方のグループには1日の摂取エネルギーに対する炭水化物の割合を25-30%、炭水化物量を20-30gとする低炭水化物食を、もう一方のグループには同じカロリーの食事を、それぞれ3週間食べてもらいました。

比較する項目は、体格、テストステロンの値、性腺機能低下症の評価基準となるAMSスコアとADAMスコア、性機能の評価基準となるIIEF-5スコア、メタボリック症候群かどうか(ウエスト周囲径102cm以上、HDL-コレステロール40mg/dL未満、トリグリセリド150mg/dL以上、空腹時血糖110mg/dL以上、2型糖尿病、血圧収縮期130mmHg以上、拡張期85mmHg以上、高血圧、のうち3項目以上に該当)でした。

その結果、低炭水化物食グループでのみ体格が改善され、正常に近づきました。

またIIEF-5スコアは増加し、AMSスコアとADAMスコアは減少し、勃起機能、性腺機能ともに改善がみられました。さらにホルモンの状態についても改善されたということです。

これらの結果から、低炭水化物食は、メタボリック症候群によって性腺機能が低下した男性において、ホルモン濃度を高め、勃起機能を改善する可能性があることが示されました。ただし結論にはさらに大規模な研究が必要となります。


*性腺機能低下症は、精巣の機能低下によるテストステロンの低下と、それによって起こるさまざまな症状をあわせもった状態。精巣の機能は加齢に伴って低下することが知られていますが、メタボリック症候群の男性では年齢に関わらずそのリスクが高くなることがわかっています。

<コメント>
今回の研究結果について知っておくべきこととして、対象者がメタボ男性であったということで、決して、すべての男性にあてはまるわけではない、すべての男性に低炭水化物食がよいわけではないということです。

確かに、低炭水化物食は減量や糖代謝の改善など有効であるとする研究報告がなされています。

ただし、炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素は、例えば、炭水化物の摂取が少なければ、たんぱく質や脂質の摂取が多くなるため、全体のバランスとして考える必要があり、低炭水化物食では、特に動物性食品から脂質やたんぱく質を多く摂取した場合、かえって、マイナスの影響が出るという報告がなされています。

そのため、単に炭水化物を減らせばよいという理解は危険でさえあります。

炭水化物、タンパク質、脂質は摂取量やバランスもさることながら、何で摂るのかが、極めて大切です。

炭水化物では、精製度の高い炭水化物ではなく、玄米や全粒粉パンなどの精製度の低い穀物を選ぶこと、タンパク質では獣肉や加工肉に偏らず、魚や大豆などの植物性タンパク質も食べ、脂質もオメガ3脂肪酸などの多価不飽和脂肪酸を十分に摂ることです。