母親のPCOSと出生児の3歳時点での発達障害リスクの関係
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の母親の出生児は発達障害のスクリーニング検査で不可となるリスクが高いことがアメリカで実施された研究で明らかになりました。
ニューヨーク州(ニューヨーク市を除く)で2008年から201年に出生した子どもを対象としたコホート研究「The Upstate KIDS study」に登録された母子を対象に母親がPCOSと診断されたことと出生児の3歳までの発達との関係を調査しました。
4,453名の母親の5,388名(35.5%が双子)が4、8、12、18、24、36ヶ月時点で、発達スクリーニング検査である「年齢及び発達段階に関する質問票(ASQ)」に回答してもらいました。質問票では、両親が子どもの微細運動、粗大運動、問題解決、コミュニケーション、個人と社会性領域の5つの領域の到達度を回答がスコア化され、評価されました。
最初の質問票で458名(10%)がPCOSと医師に診断されたことがあると回答がありました。母親がのPCOSと出生児の発達障害リスクとの関係を他の因子の影響を調整し、解析しました。
その結果、母親がPCOSである子どもの微細運動領域の発達評価が不可であるリスクは母親がPCOSでない子の1.77倍で、特に女児の単胎児で高く、2.23倍でした。
また、母親がPCOSの双子の発達評価不可のリスクは、そうでない双子に比べてコミュニケーション領域で1.94倍、個人と社会性領域で1.76倍でした。
さらに、母親がPCOSでない子どもと比べた各領域の発達不可のリスクはPCOS治療した母親よりも、治療していない母親の子どものほうが高かったことがわかりました。
これらの結果から母親がPCOSの出生児は発達遅延のリスクが、特に女児や多胎児、母親がPCOSを治療しなかった子どもで高くなることが示唆されました。
小さな卵胞がたくさんみられる状態の卵巣のことを多嚢胞性卵巣といい、超音波検査で確認できます。ただ、多嚢胞性卵巣であるだけでは、多嚢胞性卵巣症候群とは診断されません。多嚢胞性卵巣であることに加えて、排卵しづらい、あるいは、排卵しないという月経異常を伴うこと、そして、血中男性ホルモン値が高い、または、LH(黄体化ホルモン)値が高いこと、この3つをすべて満たすことが、最新の多嚢胞性卵巣症候群の診断基準とされています。
ごく簡単に言えば、男性ホルモンの値が高いため、卵胞は発育するものの途中で成熟が阻害されてしまい、排卵障害や無排卵を招くことで、不妊の原因になるのが多嚢胞性卵巣症候群というわけです。
ただ、症候群なわけですから、その症状は、決して、一様ではなく、肥満や内臓脂肪過剰、また、毛深くなるなどの男性化傾向がみられることがあったり、インスリン抵抗性といって、インスリンの効き目が悪くなって、糖や脂質の代謝に異常をきたす状態が、男性ホルモン値が高い背景にあることがあり、そのメカニズムはとても複雑なようです。
日本人女性では肥満や高アンドロゲンは少なく、インスリン抵抗性を伴うことが多いようです。
PCOSの女性が妊娠した場合、胎児は男性ホルモンやインスリンの高濃度に曝されることになり、そのことが胎児の発達にマイナスの影響を及ぼすのではないかと考えられています。
実際、これまでもPCOSの女性の出生児の自閉症のリスクが高いとの研究報告がいくつかなされています。
今回の研究ではPCOSの母親の出生児は母親がPCOSでない子どもに比べて、3歳迄の発達が遅くなるリスクが高いことがわかりました。
今回の研究ではPCOSの母親の出生児は母親がPCOSでない子どもに比べて、3歳迄の発達が遅くなるリスクが高いことがわかりました。
ただし、PCOSの治療を受けた場合は受けなかった場合に比べてリスクが低いこともわかりました。
PCOSと診断された場合は、単に妊娠するだけでなく、ホルモンや糖代謝の異常も改善を図っておくことが大切なようです。