ビタミンDの補充が不妊治療成績へ及ぼす影響
ビタミンD不足の不妊治療患者は、適切にビタミンDを補充することで不妊治療の成績が向上する可能性が報告されています。
ビタミンDの不足や欠乏は、不妊症のリスク上昇に関連することが多く報告されています。
そこで中国の研究グループは、ビタミンDの補充が治療成績にどのように影響するかを調べるべく、過去に行われた研究からデータを集計、分析を行いました。
2022年3月までの文献から、ビタミンDのサプリメントを服用したグループと対照(プラセボ(偽の粒)、もしくは何も飲まない)グループの治療成績の差を比較するため、12件(被験者の合計は2352名)を抽出しました。
その結果、ビタミンD服用群は対照群と比較して妊娠率が有意に高いことがわかりました。一方で、着床率や流産率、多胎妊娠率には差が見られなかったとのことです。
ビタミンD服用群での妊娠率の上昇はさまざまな要素と関係していました。具体的には、血中のビタミンD濃度、サプリメントの配合(ビタミンDのみか、複数の成分を配合している合剤か)、ビタミンDの総投与量、1日の摂取量、服用した期間が関連していました。
血中ビタミンD濃度が30ng/mLのビタミンD不足の女性に、ビタミンDを含む合剤(配合量:10,000〜50,000IUまたは50,000〜500,000IU)、またはビタミンDのみのサプリメント(配合量:1,000〜10,000IU)を、30-60日間毎日投与した場合で、よりよい治療成績につながったとのことです。
私たちの知る限り、この研究は適切なビタミンDの補充が不妊女性の妊娠率を改善することを統計的に調査した、またその摂取量や期間の妊娠結果への影響を報告した最初のメタ解析(複数の研究をまとめて解析したもの)です。
ただし、ビタミンD補充の量や期間についての最適化のためには、より質の高く、多くの研究が必要となります。
<コメント>
ビタミンDの摂取と妊娠率の関係を、今までになされた報告から総合的に分析した研究です。
血中ビタミンD濃度は、30ng/mL以上で充足状態とされ、それ以下では不足、また20ng/mL未満では欠乏とされます。
今回の研究ではビタミンDが不足または欠乏の不妊女性がビタミンDのみ、またはビタミンDを含んだサプリメントを30-60日間飲み続けた場合に、妊娠率が改善することが示されたとのことでした。
昨年日本人の不妊治療中の女性を対象に行われた研究では、参加者の93.5%でビタミンDが不足していたという報告がなされています。
日本人は特に紫外線を避ける傾向にありますが、必要な量の多くは紫外線を浴びることで体内でつくられます。
ビタミンDの充足のためには、意識して日に当たり、また必要に応じてサプリメントでの補充も検討するとよいかもしれません。
ビタミンDの充足のためには、意識して日に当たり、また必要に応じてサプリメントでの補充も検討するとよいかもしれません。