母児の健康

就寝時間と不妊症の関係

細川忠宏

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就寝時間が22時45分より遅くなると、不妊症のリスクが有意に高くなることがアメリカの国民健康・栄養調査(NHANES)から明らかになりました。

これまでの研究により、睡眠障害や睡眠不足は女性不妊のリスクを高めることが知られており、多くの報告がなされています。

今回中国のグループが実施した研究により、就寝時間が22時45分より遅くなると不妊症のリスクが高くなることが明らかになりました。

この研究は、2015~2020年のアメリカの国民健康栄養調査(NHANES*)から女性3,903人のデータを抽出し、就寝時間と不妊症との関連を分析したものです。

尚、不妊症の定義は、12ヵ月以上避妊せずに性交渉を続けても妊娠に至らないこととし、参加者に「少なくとも1年以上の期間、妊娠を試みたが妊娠しなかったことがありますか?」といいう質問に対して、「はい」と回答した参加者を不妊症としています。

また、就寝時間は「平日または仕事の日は、通常何時に眠りにつきますか?」という質問への回答から得ています。

分析の結果、不妊症リスクに影響を及ぼす因子(年齢、人種、睡眠時間、ウエスト周囲長、婚姻状況、教育、BMI、喫煙状況、飲酒状況、身体活動総時間)を調整した後、就寝時間と不妊症との間には相関関係が認められ、その分岐点は22時45分でした。

22時45分までは就寝時間と不妊症リスクとの間に関連は認められましたが、それ以降では、就寝時間が遅くなるに伴って不妊症リスクも上昇することがわかりました。

また、年齢、BMI、ウエスト周囲長、身体活動総時間、婚姻状況、喫煙状況、飲酒状況、睡眠時間といった要素との関連について調査したところ、BMIが高く、就寝時間が遅く人は、BMIが低い人よりも不妊になりやすいことがわかりました。

*NHANESは日本の厚労省が実施している国民健康栄養調査にあたるもので、疾病予防対策センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)が実施しています。

<コメント>
私たちの体は、外から栄養素をはじめさまざまな物質を取り込んで、体内で分解、そして合成し、体を維持しています。

そして、体内で分解するプロセスは主に目覚めているときに、合成するのは眠っているときに活発になります。

そのため、免疫や骨、筋肉の成長、再生は睡眠の質によってよくなったり悪くなったりするわけです。

卵子や精子、受精卵、胚、胎児の成育のベースに睡眠があり、それらの質をよくするために本気で取り組むべきは、睡眠の質をよくすることになるのかもしれません。

最後に睡眠を支配している体内時計を整えるために効果的な方法を以下に挙げます。

1)早く寝る:どんなに遅くとも23時迄には寝る。
2)早く起きる:起床後14~16時間後にメラトニンの分泌が始まります。
3)起床後太陽光を浴びる:出来れば45分以上散歩して。
4)朝食は必ず食べる。:起床後2時間以内に。
5)朝食はバランスよくしっかり食べる:リセット効果が高まります。
6)以上のことを毎日同じ時間に行う:週末も同じリズムを維持します。