ビタミン

不妊女性におけるビタミンDやホルモンとの関係

細川忠宏

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昨年9月に発表された文献により、原因不明の不妊症と診断された女性を対象とした研究で、血中のビタミンDの濃度が高いほど、プロゲステロン*の値も高いことが報告されています。

不妊症は、全世界で10-18%が罹患していると言われる一般的な問題です。ビタミンDと排卵や妊娠に関する研究も、今までに多くなされており、ビタミンDと排卵には、正の関連があることがいくつかの研究によって示されています。

この研究では、ルーマニアの研究者たちによって、原因不明の不妊症とされた女性86名を対象として行われ、被験者の血中のビタミンD濃度とBMI、コレステロールの状態やインスリン抵抗性、またホルモンの状態が計測されました。

計測されたデータから分析が行われた結果、プロゲステロンの値が高い女性は、血中のビタミンD濃度も高いことが分かりました。

また、被験者を排卵のある女性と排卵のない女性で分けたところ、無排卵の女性は排卵のある女性に対してあきらかにビタミンDの濃度が低かったとのことです。

具体的には、排卵を促すため、またはプロゲステロンの分泌をサポートするためには、血中のビタミンD(血清25(OH)D)濃度が少なくとも約20ng/mL必要である可能性があることが示されました。

以上のことから、原因不明の不妊症や、プロゲステロンの分泌に何らかの問題が確認された場合、ビタミンD欠乏の可能性があるいことがわかったとのことです。

 *プロゲステロンは妊娠の準備のためのホルモンとも言われ、排卵をするとその直後から分泌量が増えることが分かっています。

<コメント>
近年の研究から、不妊に悩む患者の多くでビタミンDが足りていないというデータが多く報告されています。

ビタミンDは、よい卵子をつくったり、子宮内膜を着床に適した状態にするなど、妊娠出産に深くかかわる重要な栄養素であることが、わかってきており、ビタミンDが不足することは正常な生殖機能のはたらきに悪影響を及ぼすことが考えられます。

原因不明の不妊や排卵のない女性の場合、ビタミンDの補充だけで解決するのは難しいかもしれませんが、ビタミンDを十分に補うことは必要なことだと思われます。

また昨年、日本人の不妊治療中の女性を対象とした研究では、参加者の93.5%でビタミンDが不足していたという報告がなされています。

日本人は特に紫外線を避ける傾向にありますが、ビタミンD不足を回避する基本的な方法は、日光にあたることです。

ビタミンDの充足のためには、意識して日に当たり、また必要に応じてサプリメントでの補充も検討するとよいかもしれません。