炎症を高める食事の不妊への影響
図:Nutr Res. 2024 Feb 24:125:50-60. Graphical Abstractを改変
食事性炎症指数の高い食事は不妊のリスクを増加させる可能性があることが、研究によって示されました。食事性炎症指数とは、食事内容が炎症を促進すか抑制するかを数値化したもので、炎症を促進する食事が卵巣機能に悪影響を与え、不妊のリスクを高める可能性が明らかとなりました。
米国全国健康栄養調査(NHANES)は、アメリカの一般的な人口における健康状態や栄養状態を把握する目的で行われる調査です。今回アメリカで行われた研究では、2013-2018年に行われたこの調査から抽出された20~45歳の合計2613人の女性のデータが対象となりました。
2613人の参加者には、不妊女性が347人、不妊ではない女性が2266人含まれていました。
そして、NHANES調査より、24時間の食事内容に関するインタビューのデータから食事炎症指数*が算出されました。
結果として、食事炎症指数と不妊症の間には明確な関連が見られました。食事炎症指数が2.45を超えると不妊がリスクが明らかに上昇していることが示され、食事炎症指数が低いグループに比べ、高いグループに属する女性では、不妊のリスクが1.95倍となったとのことです。
食事性炎症指数が高いと、女性不妊のリスクが高まることにつながるのではないかと、この研究では結論づけています。
<コメント>
今回の研究では、炎症を促進する性質のある食品の量をコントロールすることは、女性の不妊症に有益である可能性が示されました。
この研究で使われた「食事性炎症指数(Dietary Inflammatory Index)」とは、約2000件の先行研究から開発されたもので、このスコアが低いほど炎症を抑える食事で、高いほど炎症を促進する食事と評価されます。
そもそも、炎症反応とは細菌等が体内に侵入しようとした時、体を守るために免疫機能が働くことで起きる防御反応であり、急性炎症と呼ばれている正常な反応です。
その一方、慢性炎症は軽度の炎症が体内で長期にわたって続く状態で、自覚症状はありません。必ずしも細菌やウイルスの感染によって生じるわけではなく、さまざまな病気と関連すると考えられています。
これまでの研究は主にハーバード大学によるもので、アメリカ人の食生活がベースになっていますが、そこで得られた知見をもとに日本人の食生活にあったDIIスコアの算出方法が開発されています。
食品の摂取頻度別加算スコアは以下の通りです。
各食品を一週間に摂取した頻度によって、炎症を促進する食品は1点または2点を加点、炎症を抑える食品では1点または2点を減点します。
ただし白米と、パンや小麦麺は、1点加算か0点のどちらかのみです。
同様にビールは1点減点か0店のどちらかのみです。
【炎症を促進する食品(週の摂取頻度)】
(食品名:+1点/+2点)
・肉:2〜6/7以上
・加工肉:2〜6/7以上
・臓物:2〜6/7以上
・青魚以外の魚:5〜6/7以上
・トマト:5〜6/7以上
・砂糖入り清涼飲料水:5〜6/7以上
・卵:5〜6/7以上
・白米(1日に):3杯以上
・パン、小麦麺:毎日
【炎症を抑える食品(週の摂取頻度)】
(食品名:+1点/+2点)
・緑色野菜:7〜13/14以上
・黄色野菜:5〜6/7以上
・緑茶:7〜13/14以上
・コーヒー:7〜13/14以上
・生ジュース:5〜6/7以上
・ワイン:2〜4/5以上
・ビール:5以上
・青魚:2〜4/5以上
これらの合計スコアが低いほど炎症を起こしにくい食べ方、高いほど起こしやすい食べ方になります。
ただし、炎症を促進する食品は避けるべきというわけではなく、全体の食べ方が重要です。