食生活 (栄養)

マカの健康な男性の精液所見への摂取効果(二重盲検ランダム化比較パイロット研究)

細川忠宏

maca



マカは男性の精液所見によい影響を及ぼすことがチェコスロバキアで実施された試験で明らかになりました。

プラハのチェコ生命科学大学の研究らは、20-40歳の健康な男性20名を無作為に2つのグループにわけ、一方のグループ(11名)にはマカ粉末(胚軸)を1日1.75g、もう一方の比較対照グループ(9名、その内2名が脱落し、最終的には7名)にはプラセボ(偽薬)を、それぞれ、12週間飲んでもらい、試験開始時と6週間後、終了時(12週間後)に精液検査を実施し、マカの服用効果を評価しました。

その結果、マカ粉末を摂取したグループでは精子濃度が開始時の77.27±6.79(百万/mL)から摂取6週間後には86.11±7.48、12週間後には87.80±9.86に、運動精子数が58.00±5.40(百万/mL)から63.22±3.47、66.30±8.36へと、いずても増加傾向を示しました。ただし、統計学的に意味のある差ではありませんでした。

それに対して、対照グループは変化はみられませんでした。

このようにマカは健康な男性の精液所見によい影響を及したことから、精液所見が基準を下回る男性にとって服用する意味があるかもしれないと結論づけています。

マカは南米のアンデスの特定の地域(4200-4500メートルの高地にあるペルーのセロデバスコ県)に生育するアブラナ科の根菜で、古くから滋養強壮植物として伝統的に用いられてきました。

マカは「不妊によい」というのは、販売業者が盛んにそのような宣伝活動を行ったためであり、実際にはそのような医学的、薬学的な裏付けがあるわけではありません。そのため、マカに「過大な期待」が寄せられているというのが実情です。要するに、宣伝が効いているわけです。

実際のところはどうなのでしょうか。

まずは、これまで、秋田大学産婦人科の研究チームは、原因不明の乏精子症、または、精子無力症と診断された14名の男性不妊患者に、1日に3グラムのマカを服用させたところ、8名の男性で精液所見が改善した、そして、ペルーの試験で、健康な男性9名に、4ヶ月間にわたり1日に1.5グラム、もしくは3グラムのマカを服用してもらったところ、精液量は平均130%、精子濃度は134%、総精子数が183%、運動精子数は208%、それぞれ増加し、総精子数、運動精子数ともにほぼ2倍に増加した、また、ペルーの試験で、健康な男性57名を二つのグループに分け、一方にマカ(1.5g~3g)、他方に偽薬を1年間飲んでもらい、4ヶ月、8ヶ月、12ヶ月目に性欲を測るテストを実施したところ、マカを服用したグループでは、2ヶ月目からは性欲アップ効果が出てきて、8ヶ月後には性欲の指数が実験開始時の2.5倍を示したとの報告があります。

いずれも被験者は少数ですが、精液所見や性欲が向上する傾向があったとしています。

今回の研究も被験者数は17名と少ないものの、二重盲検ランダム化比較試験を行い、統計学的な有意差ではなかったけれども精子や運動精子の数が増える傾向にあったとしています。

このように、あくまで、健康な男性を対象にしたものであり、統計学的な有意差をもって有効性が認めらたものではありません。

これらのことから、原因不明の男性不妊と診断された場合、やはり、第一に選択すべきは高用量のCoQ10のような抗酸化サプリメントです。エビデンスレベルが高いからです。

もしも、自然な産物にこだわったり、性欲を高めたいというのであれば、マカを摂取する意味はあると思います。

ただし、その場合もペルーのアンデスの高地で栽培された原料を使ったものを選ぶこと、1日の摂取量は2〜3g程度を摂ることが大切です。