超加工食品の摂取がホモシステイン値に与える影響
超加工食品の摂取量が多いほど、血液中のホモシステインの濃度が増加することが、オランダの大学で実施された研究で明らかになりました。
研究では、参加者に対して、食事の内容に関するアンケート調査を実施し、摂取している超加工食品の量と、エネルギー比(食事で摂取したエネルギー量のうち超加工食品から摂取したエネルギーの割合)を算出し、血液中のホモシステイン濃度との関連を解析しました。
妊娠を希望する女性にとって、体内のホモシステインの濃度が上がりすぎないようにすることで、胎児の先天異常や妊娠合併症のリスクを下げることは重要です。
そのための方法として、葉酸をはじめとしたビタミンB群を充足させておくことが広く知られていますが、菓子パンやハム・ソーセージ、炭酸飲料などをはじめとした超加工食品の摂取によっても、血中のホモシステイン濃度が上昇してしまう可能性があることが明らかになりました。
超加工食品を多く摂取することは、直接的に葉酸やビタミンB群の不足につながるだけでなく、腸内の細菌環境にマイナスの影響を与えることで、ホモシステインの濃度を下げるための体内のサイクルを阻害してしまう可能性があります。
今回オランダで行われた研究は、この仮説を検証するもので、1532名の女性を対象に行われました。
研究では、参加者に対して、食事の内容に関するアンケート調査を実施し、摂取している超加工食品の量と、エネルギー比(食事で摂取したエネルギー量のうち超加工食品から摂取したエネルギーの割合)を算出し、血液中のホモシステイン濃度との関連を解析しました。
その結果、超加工食品の摂取量が増えるほど、血中のホモシステインの濃度が高くなることがわかりました。
また、参加者のBMIとの関連を調査したところ、過体重または肥満の女性は、超加工食品の摂取率が高く、ホモシステインの濃度も高い傾向にありましたが、正常なBMIの参加者ほどには、その関連性は見られなかったということです。
<コメント>
胎児の先天異常や妊娠合併症のリスクを下げるために、妊娠前から葉酸を十分に補充しておく必要があることは知られていますが、超加工食品に分類される食品の摂取によっても、さまざまなリスク上昇の原因となる、ホモシステインの濃度が高くなってしまうことが、今回の研究によってわかったということです。
ホモシステインが体内で増えすぎてしまうと、胚や胎児の発育に悪影響を及ぼし、神経管閉鎖障害や発育不良、流産や早産、さらには母親自身の妊娠高血圧症候群や子癇前症(妊娠高血圧症候群の一形態)といった妊娠合併症をも引き起こす原因となります。
今回の研究によってホモシステイン濃度を上昇させることが示された、超加工食品とは、加工度の高い食品のことで、食品をその加工度によって分類する「NOVA分類」において一番加工度の高い、グループ4に属しているものです。
NOVA分類は、栄養学や公衆衛生学の分野で広く利用されており、食品の分類は以下のとおりです。
【グループ1:食品をまったくまたはほとんど加工していないもの】
・果物、野菜、穀物(新鮮なもの/絞ったもの/冷凍/乾燥させたもの)
・豆類
・いも類
・きのこ(生/乾燥させたもの)
・肉(かたまり/切り身)
・魚介類
・卵
・牛乳(新鮮なもの/低温殺菌/粉末)
・果物または野菜ジュース(新鮮なもの/砂糖や香料を添加していないもの)
・ナッツ類、種子(塩分や糖分を添加していないもの)
・ハーブやスパイス
・プレーンヨーグルト
・緑茶、紅茶、コーヒー、飲料水 …など
【グループ2:加工食品の原料】
・植物油
・バター、ラード
・砂糖、糖蜜(サトウキビやビート由来)
・はちみつ、メープルシロップ
・塩 …など
・塩 …など
【グループ3:加工食品】
・塩漬けまたは瓶詰めの野菜や豆類
・塩漬けまたは砂糖漬けのナッツや種子
・乾燥・熟成・燻製の肉や魚
・魚の缶詰め
・魚の缶詰め
・シロップ漬けの果物
・包装されていない作りたてのパンとチーズ …など
【グループ4:超加工食品】
・スナック菓子
・クッキー
・チョコレート
・ケーキ
・アイスクリーム
・大量生産されたパン
・マーガリン
・朝食用シリアル
・炭酸飲料
・エナジー飲料
・乳飲料
・フルーツヨーグルト
・パイ、パスタ、ピザ
・肉や魚のナゲット
・ソーセージ、ハム
・ハンバーガーやホットドッグ
・インスタント食品 …など
※FAO(国連食糧農業機関)「Ultra-processed foods, diet quality, and health using the NOVA classification system」より引用・改変
なお、この研究では、超加工食品とホモシステイン濃度に明らかな関連がみられた一方で、肥満や過体重の被験者では有意差は認められませでしたが、これは、肥満や過体重の女性では過剰カロリー摂取による影響が超加工食品による影響を打ち消したのではないかと推測されています。