母児の健康

妊娠中のオメガ3脂肪酸は出生児のぜんそくの発症リスクを長期間低くする

細川忠宏

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妊娠中のオメガ3系脂肪酸のサプリメントの摂取は出生児の長期間に渡りぜんそくの発症リスクを低下させる可能性のあることがデンマークで実施された研究で明らかになりました。

デンマークとアメリカの研究チームは、妊娠中のオメガ3脂肪酸摂取の出生児の長期間のアレルギー発症リスクへの影響を調べるために、1990年から24年間追跡したランダム化比較対照試験を実施しました。

533名の妊婦をランダムに以下の3つのグループに分けました。

1)魚油グループ(266名):1日に2.7gのオメガ3脂肪酸(EPA 864mg、DHA 621mg)
2)対照グループ(136名):同じ外見のカプセルのオリーブオイル
3)非投与グループ(131名):なにも飲まない

魚油グループと対照グループはなにを飲んでいるか知らされないで妊娠後期(妊娠30週)から出産まで飲んでもらいました。そして、非投与グループにはオメガ3脂肪酸サプリメントの子のアレルギー予防効果を調べる試験であることが知らされました。

国の登録からぜんそくやアレルギー性鼻炎の薬の処方や治療の記録を24年間追跡調査した結果、母親がオメガ3脂肪酸のサプリメントを妊娠中に摂取していた子はオリーブオイルを摂取していた子に比べてぜんそくの薬を処方される割合が46%低く、アレルギー性鼻炎の薬を処方される割合は30%低かったことがわかりました。ただし、アレルギー性鼻炎は統計学的に意味のある差ではありませんでした。

また、18から19歳時点で実施したアレルギー疾患に関する自己申告のアンケートでも同様の結果が得られましたが、同時に実施した肺機能検査ではグループ間の違いは見られませんでした。

このことから妊娠後期から出産にかけてオメガ3脂肪酸サプリメントの摂取は出生児の長期に渡るぜんそくの予防効果があるかもしれないと結論づけています。

オメガ3系脂肪酸やオメガ6系脂肪酸は体内で合成されないため食事からとる必要がある「必須脂肪酸」と言われています。

必須脂肪酸は体内で生理活性物質になりますが、オメガ6系脂肪酸からつくられる生理活性物質はアレルギー症状促進に働き、反対にオメガ3系脂肪酸からつくられるそれはアレルギー症状を緩和します。そのため、オメガ6を過剰に摂取し、オメガ3が不足するとアレルギー体質が促進されると考えられています。

妊娠中、脂肪酸は胎盤を通過するため母親の必須脂肪酸バランスが胎児の免疫システムの形成に影響を及ぼし、出生後のアレルギー疾患の発症リスクに関係するのではないかと考えられ、いくつもの研究が実施されています。

今回の研究を実施したデンマークの研究グループは、2008年に世界で初めて妊娠中のオメガ3脂肪酸の摂取と出生児の16歳時点でのアレルギー発症の関係をランダム化比較試験を実施し、発表しています。ただし、その研究では退院時診断からアレルギー発症を調べたことから、実際よりも少なく見積もられた可能性が高いとして、今回、薬の処方や治療回数を調べ、さらに、18〜19歳時点で自己申告のアンケートや肺機能検査を実施し、関係を調べています。

結果は母親が妊娠中にオメガ3脂肪酸のサプリメントを飲んでいた子どもはぜんそくの薬を処方されたり、治療を受ける頻度が統計的に意味のある差をもって、低かったとのこと。

妊娠中にオメガ3脂肪酸のサプリメントを摂取することは子の出生後のぜんそくの発症予防効果があるかもしれません。

妊娠中のオメガ3脂肪酸は子の出生後のアレルギー予防だけでなく、脳の発育にもよい影響を及ぼしたり、母親の産後うつの予防にもなったりするという研究報告も多数あります。

さらには、妊娠を望む女性には卵巣機能の向上や子宮内膜症の症状の緩和も期待され、母乳にオメガ3脂肪酸が多い母親の子どもはアレルギーを発症しにくいと言われていることから、妊娠前から妊娠中、産後の授乳期までオメガ3脂肪酸のサプリメントを摂取する意味がありそうです。

出典: J Allergy Clin Immunol 2019;139:104-111