不妊の原因になる病気

高めの血圧が精子の質や妊娠成績に及ぼす影響

細川忠宏

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正常値内であっても高めの血圧は精子の質を低下させ、妊娠率の低下と流産率の上昇のリスク因子になり得ることが、中国の研究で明らかになりました。

精液所見が悪い男性は正常な男性に比べて高血圧や高脂血症、抗尿酸血症、皮膚疾患などを持っている割合が高く、特に高血圧を治療することで精子の運動性が改善されるとの報告が多くなされています。

また高血圧症や高血圧前症(正常値内であっても血圧が高めの状態)は、男性に多くみられる疾患であるにもかかわらず、プレコンセプションケアとしてそれほど問題にされていません。

そこで中国の研究グループは、高血圧前症が精子の状態や不妊治療の成績に及ぼす影響を調べました。

北京の医療機関で2013年1月~2022年11月の間にはじめて凍結胚の移植を受けた1043組の不妊症カップルの男性パートナーを高血圧前症群(120-139/80-89mmHg)と対象群(90-119/60-79mmHg)に分け、精液検査の結果と胚移植後の治療成績を比較しました。

その結果、高血圧前症群は対照群に比べて、総運動精子数、総精子数、精子運動率、前進精子数が有意に低く、乏精子症や精子無力症の割合が高いことが示されました。

また、妊娠率や生児獲得率*は高血圧前症群が対照群に比べて有意に低いことが分かりました。

さらに関係するさまざまな因子による影響を調整して分析を行った結果、高血圧前症は妊娠率や生児獲得率のリスク因子になり得ることが分かりました。

*最終的に出産まで至った女性の割合

<コメント>
高血圧や正常値内であっても血圧が高めの男性は、精子の状態だけでなく不妊治療の成績にもマイナスの影響を及ぼすことから、お子さんを望む男性はプレコンセプションケアとして血圧にも注意を払う必要があるかもしれません。