男性の生活習慣改善は有効か?
男性の不妊症は、生活習慣や他の健康問題と関連しており、男性の妊娠前のケアにおいて、生活習慣の改善が精子の質を改善する手段として重要です。
お子さんを望むカップルにとって、女性のみならず男性のプレコンセプションケアの重要性もますます知られるようになっています。
関東の不妊治療クリニックでは、通院する男性不妊患者を対象に、生活習慣を改善することでどのような良い影響が得られるかが調査されました。
クリニックを受診し、精液検査の結果が基準値以下となった402名の男性(無精子症を除く)を対象として、この調査は行われました。
参加者の健康状態や泌尿器的な問題を調査したところ、多くの男性が問題を抱えており、98.8%の参加者が、精索静脈瘤、性腺機能低下症、肥満、高血圧、亜鉛欠乏症、高脂血症、肝機能障害、糖尿病のうち1つ以上の要因を持っていました。
また、精子の質にマイナスと考えられる生活習慣として、22.6%で喫煙、47.0%で頻繁な飲酒、75.1%で精巣の熱ストレス(体にフィットした下着、15分以上の入浴、サウナ)がありました。
その後参加者には、以下を含めた健康的で規則正しい生活を送るように指導しました。
・禁煙
・アルコールの摂取をやめる、または減らす
・ゆったりとした下着の着用
・15分以上湯船につかることは避ける
・放射線被曝を避ける
・フィナステリドやデュタステリドを含む男性型脱毛症治療薬を避ける
・ひざ上でのノートPCの使用を避ける
・禁欲は3日以内とする
その結果、一部の参加者で、精子の運動率、濃度、総精子数、総運動精子、正常形態率といった精液検査の結果が改善し、精子の質の指標であるDFI(*)の値に明らかな改善がみられました。
ただし、改善は、精索静脈瘤や性腺機能低下症の患者で観察されましたが、夜勤、勃起不全、高血圧、肥満、亜鉛欠乏症、糖尿病の患者では見られませんでした。
*) 精子DNA断片化指数(DFI):精液の中にDNAの損傷した精子が含まれる割合
<コメント>
妊娠を希望するカップルにとって、男性のプレコンセプションケアにも関心が高まっており、米国疾病対策センターや世界保健機関(WHO)、国立成育医療研究センターなどが男性向けのプレコンセプションケアに関する情報を提供しています。
今回報告された研究では、禁煙や禁酒をはじめとした生活習慣の改善によって、精索静脈瘤や性腺機能低下症がある場合でも、精子の質が改善されることが示されました。
一方で、夜勤、勃起不全、高血圧、肥満、亜鉛欠乏症、糖尿病の男性では、精液の状態は改善されなかったとのことです。
妊娠を望むカップルにとって、食事や生活習慣の改善は自らが取り組めることとして有効ですが、健康上の問題がある場合など、必要がある場合は医療機関にかかり、検査や治療を受けることが大切でしょう。