不妊の原因になる病気

睡眠時間と精子の質の関係

細川忠宏

suimin
睡眠時間が長くても、短くても、未成熟な精子が増え、精子の質が低下ことが中国の研究で明らかになりました。

2013年に中国の重慶市の男子大学生796名を対象に睡眠時間と精子の質と関連性があるのかを調べるべく研究を実施しました。

睡眠時間はミュンヘンクロノタイプ質問紙を用いて、また、精子の質は、SCSA(精子クロマチン構造検査)やコメットアッセイで、精子の精子の細胞核内にあるDNAとタンパク質の複合体である、クロマチンの構造が正常かどうかを調べました。

その結果、1日の睡眠時間が7-7.5時間より長くても、短くても、DNAの成熟が不十分(未熟)な精子の割合をあらわす高DNA染色性が高く、1日の睡眠時間が9時間以上、あるいは、6.5時間未満の男性は、高DNA染色性が7-7.5時間の男性に比べて、それぞれ、40.7%、30.3%、低いことがわかりました。

ただし、DNA損傷指数やコメットアッセイのパラメーターとは関連しませんでした。

このことから、睡眠時間は7-7.5時間が適切と考えられ、それより長くても、短くても、精子の質の低下に関連することがわかりました。

睡眠の質が低すぎても、高すぎても、精子濃度や正常精子形態率の低下に関連するというデンマークの研究報告がなされていますが、今回は睡眠時間と精子の質の関連を調べています。

睡眠時間と言えば、不足を懸念しますが、もちろん、睡眠時間が短すぎるのもよくないけれども、それだけでなく、長すぎても、精子の数にも、質にも、悪い影響を及ぼすようです。

要するに、睡眠不足も、寝過ぎもよくないということのようです。

特に、睡眠時間と精液量と精子数の関連が認められたことから、精子の質でも同じような関連があるのではないかと予測し、精子の質の指標とされているDNA断片化指数や高DNA染色性を測定し、同様の関連があることを確かめました。

DNA断片化指数や高DNA染色性は、SCSA検査(精子クロマチン構造検査)で、精子の中のDNAの状態を調べ、どの程度の割合で精子のDNAが損傷しているのかを調べ、測定されます。

DNA断片化指数はDNAが断片化している異常のある精子の割合のことで30%以下が正常、高DNA染色性はDNAの成熟が不十分な精子の割合のことで10% 以下が正常とされていて、DNA断片化指数が30%以上になったり、高DNA染色性が10%以上になると、自然妊娠や人工授精による妊娠が難しくなり、体外受精や顕微授精の治療成績も低くなるとされています。

原因が見当たらないのに精子数が基準値を下回ったり、パートナーの女性側に原因が見当たらないのに体外受精や顕微授精を繰り返しても結果が伴なわない場合、男性の睡眠を見直すことで改善が期待できるかもしれません。