食生活 (栄養)

リコピンの摂取量と卵巣予備能の関係

細川忠宏

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不妊治療を受けている女性患者を対象とした研究で、主にトマトから摂取するリコピンの摂取が卵巣予備能に影響をあたえる可能性が示されました。具体的にはリコピンの摂取量が6,000µgまでは摂取量に応じて胞状卵胞数も上昇し、リコピンの摂取量が6,000µgを超えると胞状卵胞数は下がることが分かりました。

酸化ストレスは卵巣内の環境に直接的なダメージを及ぼし、卵子の量や質の低下につながる上に、酸化ストレスから卵巣や卵子を守る抗酸化力は年齢により徐々に低下することが知られています。

そこで抗酸化作用にはたらくビタミンA、ビタミンC、ビタミンEやカロテノイドといった栄養素の摂取が卵巣予備能の低下を抑える可能性があることが考えられます。

そこでスペインの研究グループは、不妊治療を受ける女性における抗酸化物質の摂取量と卵巣予備能との関係を調べました。

EARTH研究*に参加する、不妊治療中の527名の女性を対象に、食事に関するアンケート調査を実施し、抗酸化作用のある栄養素(ビタミンA、C、E、カロテノイド)の摂取量を算出しました。卵巣予備能は、その指標である胞状卵胞数を測定し、抗酸化作用のある栄養素の摂取量との関係を分析しました。

その結果、カロテノイドの一種であるリコピンの摂取量と胞状卵胞数には関連があることが明らかになりました。具体的にはリコピンを1日に約6,000µg摂取している女性の胞状卵胞数が最も高く、6,000µgまではリコピンの摂取量が増えるほど、胞状卵胞の数も上昇しました。

一方で、35際未満の女性では、主に乳製品からのレチノール摂取量が増えるほど、逆に胞状卵胞数が減少することが確認されました。

この研究により、不妊治療を受ける女性において、リコピンの摂取が卵巣予備能に影響をおよぼす可能性が示されました。またその一方で、同じく抗酸化作用があるとされるレチノールの摂取量が多いことが卵巣予備能の低下に関連したことに関しては、単に酸化ストレスを増加させた(減らすことができなかった)のではなく、別のはたらきや理由によるものの可能性があり、さらなる調査が必要と結論づけられています。

*マサチューセッツ総合病院で不妊治療を受けているカップルを対象に、治療成績に影響する要因について調査が行われている現在進行中の研究

<コメント>
この研究により、主にトマトに含まれることで知られるカロテノイドの一種「リコピン」の摂取量が卵巣予備能に関連している可能性が示されています。

リコピンを含むカロテノイドやポリフェノールはファイトケミカルと呼ばれ、植物に含まれる抗酸化作用のある成分として知られています。

その中でリコピンはトマト以外にもすいかやピンクグレープフルーツ、グァバなどの赤色の果物や野菜に含まれます。またその抗酸化作用は非常に強く、β-カロテンの2倍以上、ビタミンEの約100倍とも言われています。

またリコピンは熱に強く、むしろ加熱すると細胞からはなれることで吸収されやすくなります。脂溶性の栄養素のため、油と一緒に調理すると吸収率が高まるとされています。