男性の電子タバコはパートナーの正常胚率を低下させる
男性の電子タバコ使用は、通常のタバコと同様に男性の生殖能力に悪影響を及ぼし、PGT-Aによる正常胚率を下げ、妊娠に悪影響を及ぼすことがヨーロッパで行われた学会で発表されました。
電子タバコよりも紙巻きタバコのほうが、タールやニコチンなどの有害物質が多く含まれていることから、電子タバコは紙巻きタバコに比べて害は少ないのではないかとの意見があります。そのため、電子タバコを通常のタバコの代替品として使用されるケースが増えているようです。
今回韓国の研究グループが行った研究では、2022年1月から2023年12月までの期間に大学病院で着床前遺伝学的検査(PGT-A)を受けた体外受精患者に対し、PGT-Aの結果と男性パートナーの喫煙状況(禁煙、紙巻きタバコ、電子タバコ)の関係が調べられました。
男性と女性の平均年齢はそれぞれ40歳と38.7歳、合計4,796個の胚にPGT-Aが実施されました。
また参加者全体の1,725周期に対して男性パートナーが紙巻きタバコを使用していたのは370周期、電子タバコを使用していたのは294周期、禁煙していたのは1061周期でした。
調査の結果、男性が非喫煙者の正常胚率は27.3%、紙巻きのタバコの場合は23.6%、そして、電子タバコを使用している場合は18.8%と、紙巻きタバコよりも電子タバコのほうが正常胚率が低いことがわかりました。
女性の年齢層別にみてみると、以下のような違いがありました。
38歳未満の女性では、パートナーが非喫煙者の正常胚率は38.2%、紙巻きタバコでは37.4%、電子タバコでは29.9%であり、38歳以上の女性で、パートナーが非喫煙者では18.9%、紙巻きタバコでは17.7%、電子タバコでは11.6%と、電子タバコによる正常胚率の低下が顕著に明確になっています。
女性の年齢に加えて男性の年齢も加味すると、女性が38歳未満でパートナーが39歳までの男性である場合の正常胚率は、非喫煙者で39.0%、紙巻きタバコで38.3%、そして、電子タバコで31.7%でした。一方、男性の年齢が40歳以上になると、非喫煙者で35.0%、紙巻タバコで32.6%、電子タバコで27.7%と、男性の加齢も正常胚率に悪影響を及ぼしていることがわかります。
これらのことから、胚の正常胚率を維持するためには、男性の禁煙が必須であり、電子タバコは紙巻タバコよりも妊娠に悪影響を及ぼす可能性があることがわかりました。
<コメント>
電子タバコとは、これまでのタバコのようにタバコの葉を燃やして、煙を吸引するのではなく、タバコの葉や液体を加熱し、発生した気体を吸引するものです。
加熱による気体は、従来の燃焼による煙に比べて有害物質の種類や量が異なること、また煙が見えにくいことから、健康への悪影響が軽いのではないかという認識が一部にあり、喫煙者に対して健康のために電子タバコに変えることを推奨するような風潮もあるようです。
ところが、電子タバコも従来のタバコと同じように健康への悪影響があることを示すデータが蓄積されてきているようです。
一方、電子タバコの精子への影響については、これまで動物実験で悪影響が示されているだけで、ヒトの精巣の働きへの影響については不明でした。
ただし、日本呼吸器学会は以下の見解を示し、非燃焼式・加熱式タバコも燃焼式タバコと同じように健康に悪影響を及ぼすことを示すデータが蓄積されてきていることを伝えています。
https://www.jrs.or.jp/information/file/hikanetsu_kenkai_kaitei.pdf
https://www.jrs.or.jp/information/file/hikanetsu_kenkai_kaitei.pdf
電子タバコ使用の精子の質については、紙巻きタバコよりも害が大きい可能性があることが今回の研究で示されました。
禁煙が難しいことから電子タバコに変えても無意味で、パートナーの妊娠率をもっと下げることになるかもしれません。