適度な運動と精子の質の関係
きついと感じない程度の適度な運動をする男性は、精子の運動率や正常形態率が高く、反対にゆっくりとした歩行や激しい運動は精子運動率や正常形態率が低くなることがイタリアの研究により明らかになりました。
今までの研究により、適度な運動が精子の質に良い影響を及ぼすことがわかってきていますが、適度な運動とはどのような運動をどの程度の強度で行うことなのかについてはまだ明確な答えが出ていませんでした。
そこでイタリアの研究グループは、若年健常男性を対象に運動の強度と精子の質の関係について調査を行いました。
喫煙や飲酒習慣がなく、薬物や医薬品も使用していない、BMIや腹囲が正常な健康な18-23歳の男性143名を対象として、研究を行いました。
参加者には登録時と4ヶ月後、8ヶ月後に精液検査や身体計測をし、運動習慣については国際標準化身体活動質問票(International Physical Activity Questionnaire; IPAQ)を用いて評価しました。また直近1週間の歩行や運動(中程度/激しい運動)の時間や頻度から総身体運動量を算出し、精液検査の結果との関連を調べました。
調査の結果、中程度の運動をたくさん行う男性は精子の運動率や正常形態率が高く、反対に運動量が少ない場合やゆっくりとした歩行、激しい運動を行う時間や頻度が高い男性は精子運動率や正常形態率が低いことが分かりました。
この研究により、精子の質の維持のためには適度な運動を行うべきという現在の推奨を裏付ける結果が導かれました。
<コメント>
運動の強度と精子運動率や正常形態率との間に逆U字型の関連が認められました。
今回の研究において中程度の運動量は、600-2,999METs/分/週*と定義され、これは「きつい」とまでは感じないものの、身体的にやや負荷がかかり、少し息がはずむようなレベルの運動です。
中程度の運動を多く行っている被験者では精子パラメータの値が高かったのに対し、運動量が少ない、あるいは反対に激しい運動を多く行っている被験者では精子パラメータの値が低くなりました。
精子の質の維持には身体的にやや負荷がかかり、少し息がはずむようなレベルの運動がよいようです。
*メッツ(METs)は身体活動の強さを表す単位で、安静時を1としたときに何倍のエネルギーを消費するかを示します。